平成28年6月29日(水)

参議院議員選挙とその後の政局!

高橋利行先生

高橋利行先生

政治評論家、
読売新聞元解説部長・編集局次長・新聞監査委員長



概要

昔から、衆議院選挙は政権選択の選挙だが、参議院選挙は中間選挙のようなもので、「お灸を据えてやろう」という意識が働き、意外に与党が大敗し、結果倒閣につながることもある。第一次安倍内閣のときがまさにそうだった。新聞各紙の第1回世論調査では、自民・公明が議席を増やし、与党勝利と言う予測だが、これには、「アナウンス効果」というものが働き、実際の結果が変わる可能性がある。それは、「それなら選挙に行かなくていいや」とか「そんなに勝つのなら野党に入れてみようか」というものである。よって、自公過半数は間違いないだろうが、自民単独過半数や改憲可能な議席数まで届くかは楽観視できない情勢である。また、今回から投票年齢が18歳に引き下げられたことも、投票行動の読みにくさにつながっている。もう一つのトピックは、野党統一候補である。共産党の真の狙いは、野党共闘で政権を取った際の乗っ取りにある。共産党の組織力は強く、協力を受けた議員は共産党なしでは当選できなくなり、結果、乗っ取りが実現するということだ。また、従来全選挙区に候補者を立てていた共産党がそれを止めたことで、供託金の没収による損失も少なくなる。これは機関紙が売れなくなり財政の厳しい共産党の利点になる。
 もはや一国平和主義、自国だけの利益追求は許されない時代だ。集団安全保障をやり、TPPなどで関税障壁をなくすという考え方は人類の知恵であり、これを推進してきたのが安倍内閣である。これ以上景気が回復することは見込めないので、今回はダブル選挙にするタイミングを逃したのかもしれない、しかし世界が不安定化する中で、安定政権を国民が志向する可能性はある。地方ではTPPへの反感が根強いが、品質で差別化するのは難しい。米だけでなく、果実や他の道を探り、力のある政治家のサポートを受けて体質改善して行くしかない。

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