平成28年9月29日(木)

米大統領選後に、いかに対応するか!

浅海保先生

浅海保先生

読売新聞東京本社元編集局長・同グループ副主筆



概要

アメリカ大統領が、トランプになるか、クリントンになるか、僅差であり、まだ予想はつかない。
 アメリカが大事にしてきたものは、(1)言論の自由、(2)多様性、(3)自由競争である。これが崩れ始めている。(1)言論の自由を維持する枠組みとして「ポリティカル・コレクトネス」がある。これは、真実を隠すための演技ともいえ、それゆえヒラリー・クリントンに人気がない。また、(2)人種的多様性は、「白人優先の原則」があればこそだった。これも人口的に崩れつつある。貧しい白人も増えている。(3)自由競争は貧富の差を生む。これが、アメリカ社会を歪めているのは確かだ。
 経済成長の鈍化と国際的な指導力の低下により、Amexitへアメリカは向かうだろう。Amexitとは、過去70年にわたって形成され、強化されてきた、世界規模に及ぶアメリカのリーダーシップ、これに伴う同盟関係からの「脱出」を意味する。そもそもオバマの「チェンジ」は、アフガン・イラク戦争の撤退であり、Amexitのはじまりだった。
 トランプは「世界の警察官をやめる。同盟国をタダで守ってやる必要はない。同盟国はもっとペイすべきである」と言っている。日本に対して防衛の対価の上乗せを要求してくるのは間違いない。これが日本国内世論を変えていく可能性はある。再軍備しようという意見が強くなるかもしれない。
 トランプはTPP反対だが、自由貿易は必要だ。アメリカも孤立して生きていけないので、TPPに代わる枠組みがでてくるだろう。  

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