教育部会作成要請書第19本目、政府宛提出要請書34本目、平成元年1月10日提出
初任者研修の実効を期する諸策についての要請

【要請書全文】


要 請 の 趣 旨

 「国家百年の大計は教育にあり、その根幹は教師にある」とよく言われますが、この理念に基づいて、先頃『教育公務員特例法』が改正され、来年度から、新任教員の仮採用期間が半年から一年に延ばされ、その期間「初任者研修」が義務づけられましたことは、誠に意義あるものと思います。
 しかるに、一部の民間教育機関および教職員団体の中(以下これらを「反対者」と表記する)には、子どもと父母をも利用して、初任者研修を形骸化しようと運動を展開しており、いま、学校現場に混乱を引き起こしております。こうした合理的改正を、あえて改悪と称し、教育現場に児童・生徒を忘れた政治的闘争を持ち込む教育荒廃の実態こそ、良識ある国民によく認識していただき、改正された法律に従い初任者研修の成果を上げて、教育の正常化を進めることが肝要であります。
 そのためには、以下の理由に述べるように、初任者研修の精神を明確にすると共に、服務規律、指導技術、公簿表簿事務処理の徹底、さらには、練達の研修指導者の登用などについて、特に御配慮を頂きたく、ここに要請申し上げる次第であります。

要 請 の 理 由

一、初任者研修は、学校教育法に教育目標として掲げられている「国家および社会の形成者としての必要な資 質を養うこと」「郷土及び国家の現状と伝統について、正しい理解に導き、進んで国際協調の精神を養うこと」等を、徹底・実現のために行われる研修であります。
 ところが、反対者は、この初任者研修を「真に生きた研修、日常の教育活動に役立つ研修を求めている現場の要求や実態とはかけはなれた国定教師づくりのための洗脳教育である」と云って反対しております。
 しかし、初任者研修は、上述の「学校教育法の教育目標」の実現である以上、法に反するものではなく、それこそ「真に生きた研修、日常の教育活動に役立つための研修」であり、また特に義務教育に携わる教員は、「教育公務員」としての義務と責任を負うのは当たり前のことであって、それをあえて「国定教師づくりのための洗脳教育」といった表現で反対することこそイデオロギー的であって、前任者研修はむしろ、反対者らのそうした洗脳教育を是正するためにも、必要なことであると考えるものであります。

二、教職員にとって必要なことは、正しい教職観を身につけ、合理的な指導技術を修得し、児童・生徒をよく理解することにあります。
 ところが、反対者は「研修は自主的・自覚的に行われることによって成果を上げるものであり、強制や命令によって行うことは、強制・画一化を志向するものであり、研修の大原則を踏みにじるものである」と攻撃しております。
 しかしながら、国民全体の奉仕者であって、可塑性に富む児童・生徒の人格形成・教育を預かる教師が、その責任の重要性から、教職に従事する前に、教職に関する初歩的・基本的知識・技能を身につけるため初任者研修を受けることは、しごく当然のことであります。
 もし、反対者が云うように、経験もない段階で「初任者研修を自主的・自覚的に行う」とするならば、正しい教職観も身につかず、指導技術の修得もなく、したがって児童・生徒をよく理解できない段階だけに、教育現場に一滴の混乱を持ち込むことになります。
 つまり、重ねて云えば、新任教師が、心構えも初歩的な知識技術の理解もなしに指導に当たることは、教育現場の混乱と、子どもや父母の不信を招き、それは、ひいては教師自らの自信喪失にまでつながるものとなりましょう。
 また、初任者研修は、新しい職場に入るにあたって、職場のシステム・きまり、教師としての心構え、資質・技能を体得するために必要なことであるので、これを、反対者のように「強制・命令・画一化だ」というのは、あまりにも真実を捩じ曲げるものであります。

三、以上のことからも明らかなように、初任者研修は、そのために多少の費用がかかっても、資質・能力・心構えとも優れた教師を育て、児童・生徒の人格形成・知能向上に貢献し、以て父母の付託にも応えようとするものであります。
 しかるに、反対者は、初任者研修を「子どもの指導に役立だない」「管理あって教育なし」「税金のむだ使い」「研修のための自習が多くなる」等と一方的に批判し、一部の父母を取り込んで反対しております。
 しかし、いま、教育現場では、
○勤務時間内における組合活動・動員のための授業カット
○校内外職場会などの組合活動のための諸会合
○その他、不正常な勤務態様、勤務時間、あるいは、一単位時間(小学校40分、中学校45分)の短縮等々で正常な教育が出来ないでいるのが、教育現場の実態でありますから、反対者は、今回の前任者研修に関する『教育公務員特例法』改正を批判する前に、右のような教育現場での弊害を生ぜしめないよう、自粛してもらいたいものだと思います。

四、いま「教師はどうあらねばならないか」ということが強く問われています。こうした課題をふまえ教師を志す初任者研修には、特に、次の諸項を周知徹底せしめることが重要であると考えます。
○服務に関する内容
  @職務に専念する義務
  A秘密を守る義務(児童・生徒の成績等の部外へ)
  B児童・生徒に対する懲戒(体罰の禁止)
  C争議行為等の禁止
  D信用失墜行為の禁止
  E教育公務員の政治的行為の制限
  F所属教育委員会・学校の服務(勤務)規定
○学習指導に関する内容
  @教育課程と指導計画
  A学習指導要領の基準性(公教育性)
  B教科書及びそれ以外の教材・教具の使用
  C調和と統一のとれた各教科・道徳・学校行事の指導
  D授業時数の確保
  E指導上の基本に関する興味・関心と能力の尊重
○校務に関する内容
  @校務分掌の意義
  A指導要領の性格と機能(学籍記録と証明原簿)及びそれ以外の公・表簿反対者は、教育公務員特例法の改正(初任者研修の充実)を必要ないと云いますが、右に上げた諸事項は、初任者が就任早々から必要な職務であって、これらは徹底した初任者研修なしに身につくものではなく、経験あるよき指導者の指導による実践に役立つ研修によってこそ、身につくものでありますから、初任者研修の充実は、是非とも実施・徹底されなければなりません。

五、初任者研修の主たる目的は、前掲の諸事項に基づいた教育実務の体得に置かれるべきであります。そのためには、初任者研修に際して、初往者を指導する者の役割が極めて重荷であることは、論を待ちません。
 そのためにも、こうした教育実務の研修は、一般の学者・文化人もさることながら、長年にわたり、そうした実務を実際に体験してきた者、すなわち、退職校長・教頭をけじめとして人物―識見すぐれた教職経験者の、登用・活用を考えるべきであると考えます。
けだし、
 @学級経営のおり方。学級事務、学校事務の処理の仕方、給食指導のあり方、PTAとのあり方、長期休暇のとり方。
 A各教科の学習指導法、生活指導の望ましいあり方。
 B児童・生徒理解の仕方、一人ひとりに応じた指導のおり方。など、教育現場の実務に関するものは、とりわけ、学校現場で長年体験を積んだ経験者でなければ指導できない面か多く、また、毎日の学校経営が職務である現職校長・教頭は初任者研修に十分な時間を割き得ないと思われる以上、ここは、現場体験の豊富な元学校長らを登用して、初任者の指導に当たらせることが必要、と考えられるからであります。
以上の諸点について、御配慮賜りますよう、。要請申し上げます。

ページのトップへ 要請書の全文をお読みになるには 要請書一覧へ